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書いた人は、札幌在住の還暦ブロガー・櫻田泰憲。リンク先は、俺の読書と視聴の記録をまとめたnoteのページだ。
『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』1巻は、ロリコン漫画でも恋愛漫画でもない。失恋した26歳の吉田が、17歳の家出少女・沙優に「正しい物差し」を教え直す全6話であり、最後の最後で「運命の出会いは後になってわかる」という一本の線がつながる。
この記事は、ひげを剃る。そして女子高生を拾う。1巻のネタバレ(全6話のあらすじ)、感想、考察、みどころを、1本にまとめたものだ。読み終えたころには、1巻を買うべきかどうかも決まるはずだ。
まずは1巻そのものを手元に置きたい人へ。電子版なら、読みながらこの記事の場面を検索できる。AmazonのKindle版(角川コミックス・エース)は、このリンクから見られる。
ひげひろ1巻の基本情報と全6話の収録
数字はKADOKAWAの商品ページと、巻末の奥付で突き合わせた。公式の紹介文と最新の定価を自分の目で見たい人は、KADOKAWA公式の1巻の商品ページをのぞいてほしい。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ひげを剃る。そして女子高生を拾う。(1) |
| 原作 | しめさば(角川スニーカー文庫のライトノベル) |
| 漫画 | 足立いまる |
| キャラクター原案 | ぶーた |
| レーベル | KADOKAWA/角川コミックス・エース |
| 発売日 | 2019年5月25日 |
| 判型・ページ数 | B6判・196ページ |
| 定価 | 682円(本体620円+税) |
| 初出 | 月刊少年エース 2019年1月号〜6月号 |
| その後 | TVアニメは2021年4月から全13話。コミックスは全13巻で完結 |
1巻に入っている6話と、目次に載っている開始ページは次のとおりだ。
- 第1話「失恋と女子高生」(001ページ〜)
- 第2話「生活と遠慮」(043ページ〜)
- 第3話「仕事と後輩」(075ページ〜)
- 第4話「焼肉と想い人」(107ページ〜)
- 第5話「化粧水と休日」(135ページ〜)
- 第6話「映画と運命」(159ページ〜)
吉田・沙優・後藤・三島の人物整理
1巻の人物は、恋の相手が2人、家族のような相手が1人、それを見守る脇役が数人だ。先に表で顔ぶれを頭に入れておくと、あらすじがぐっと追いやすくなる。
| 人物 | 立場 | 1巻での動き |
|---|---|---|
| 吉田 | 26歳のIT企業勤め | 後藤に振られた夜に沙優を拾い、「叩き直す」と宣言して同居する |
| 荻原沙優 | 北海道・旭川から家出した高校生 | 半年の家出で身につけた遠慮を、少しずつ手放していく |
| 後藤愛依梨 | 吉田の2つ上の上司 | 吉田が5年片思いした相手。焼肉の席で素顔を見せる |
| 三島柚葉 | 入社2年目の後輩 | 吉田が教育係。第3話で本格登場し、第6話で一気に距離を詰める |
| 橋本 | 吉田の同期(既婚) | 沙優のことを唯一打ち明けられる相手。助言も茶化しも担当する |
| 小田切課長・遠藤 | 吉田の上司・同僚の女性 | 第5〜6話の出張話を動かす。遠藤は一人称が「俺」 |
ひげひろ1巻のあらすじ(ネタバレあり)

第1話。入社から5年、ずっと後藤愛依梨に片思いしてきた吉田は、動物園とフレンチのデートで「俺の家に来ませんか」と切り出す。返ってきたのは「私、恋人がいるの」だった。
やけ酒で酔いつぶれた帰り道、電柱の下に座り込む女子高生・沙優と出会う。家出中で行き場のない沙優は「やらせてあげるから泊めて」と言うが、吉田は「ガキなんか抱けるか」と断り、それでも見捨てられず家に上げる。
寝る前に「してほしいことは?」と聞かれた吉田は、「女の作った味噌汁が飲みたい」とだけ頼む。
翌朝、沙優は本当に味噌汁を作って待っていた。寝言で後藤への未練まで知られた吉田に、沙優は「慰めてあげよっか」と体で返そうとする。
旭川から半年前に家出し、見知らぬ男の家を転々としてきたと知った吉田は怒り、「俺がお前の馬鹿極まりない思考を叩き直してやる」と宣言する。家事を全部やることを条件に、同居が決まる。
第2話。同期の橋本に沙優のことを打ち明けると、「それはやばいでしょ」と言われる。捜索願は出ていない。帰宅すると沙優が「おかえり、パパ?」と迎え、味噌汁と弁当、アイロンのかかったシャツまで用意している。
家で煙草を吸えばと勧める沙優に、吉田は「お前が今まで会った奴らがクソだったんだ」と返す。服を持たない沙優に1万円を渡し、布団も買う。沙優が来て1週間、晩酌しながら「会話する相手が家にいるのも悪くない」と思ったところで、映画館から出てくる三島の姿が映る。
第3話。髭を剃る日と剃らない日がある吉田に、沙優は「似合ってないよ」と言う。会社では後輩の三島が仕事で大きなミスをして怒られるが、教育係が外されるかもと聞くや完璧な資料を出し直す。
居酒屋で三島は、振られたと聞いて「むしろラッキー」と言い、「頑張る人がへばったとき、スタンバイしてる人が必要。それが私」と語る。帰宅が遅れた吉田は、むくれた沙優に謝り倒す。
第4話。後藤から「明日、夕食でもどうですか」とメッセージが届く。橋本は「フラれてからが本番」と背中を押す。炭火焼肉の店で、後藤はビールを一気に空け、「みんなお淑やかを求めるけど、吉田君は気にしないでしょ」と笑う。
そして「最近、恋人ができたでしょう」と切り出す。三島との仲を疑われた吉田は、「5年間あなただけを想ってました」と言い切る。帰宅すると、沙優が黙って抱きしめてくる。
第5話。吉田は橋本と携帯ショップへ行き、沙優に携帯を買う。日曜はドラッグストアで化粧水を選び、「昔みかんは好きだった」とこぼした吉田に、沙優はオレンジの香りを選ぶ。
携帯を渡された沙優に、吉田は「ここはお前が普通の女子で居ていい場所なんだ」と告げる。連絡先に入っているのは吉田だけだ。その夜、小田切課長から「明日から2週間、岐阜へ出張を」と連絡が来る。
第6話。気乗りしない吉田に代わり、同僚の遠藤が出張を引き受ける。女の影を疑う三島は、吉田を夜の映画に誘う。劇中のカフェマスターは「運命の出会いは後になってわかる」と語る。
帰り道、三島は「私は今、運命の出会いに気づきたい」と言って吉田に抱きつく。帰宅した吉田は、鍵がかかっていない玄関に気づく。家の中は静かで、「沙優…!!」と叫んで走り出したところで、第2巻へ続く。
ひげひろ1巻のみどころと刺さった台詞
1巻を読んで、線を引いた場面を先に3つ挙げる。どれも、恋愛漫画の文法だけで読むと素通りしてしまう場面だ。
- 「俺がお前の馬鹿極まりない思考を叩き直してやる」(第1話):同棲ラブコメなら、ここで甘い空気が流れる。吉田は手も出さず、教育係を名乗る。頼んだ対価も体ではなく味噌汁だ。
- 「基準を低く持つな、正しい尺度で物を見ろ」(第2話):沙優が「優しいね」と言ったときの返事だ。優しいのは吉田ではなく、これまで出会った大人がひどすぎた、と言い切る。
- 「ここはお前が普通の女子で居ていい場所なんだ」(第5話):ごまかし笑いも、変な気づかいもやめろ、と吉田が告げる。「叩き直す」から「受け入れる」へ、立ち位置が変わった瞬間だ。
ここまで読んで気になった人は、Amazonの商品ページで、試し読みや最新の価格を確かめられる。母の介護で夜に少しずつ読み進める俺には、スマホで続きから開ける電子版が合っている。
巻末の書きおろし・あとがきと、カバー裏の4コマ
この巻に、書きおろし短編は載っていない。そのかわり、巻頭と巻末に作り手の声がぎっしり詰まっている。
巻頭の足立いまるさんのコメントは、この作品をひそかに「るそし」と略していて、原作側の「ひげ」と割れていると明かし、かわいい略称を読者に募る。
巻末には、プロット、ネーム、原稿の3段階を絵つきで見せる「できるまで」があり、いちばんしんどいのは修正、いちばん楽しいのは三島の作画と書かれている。アシスタントのありすんさんと千世さんの祝辞も、キャラへの愛であふれている。
原作のしめさばさんのあとがきは、2ページにわたる。キャララフを初めて見たとき、キャラを「掴んで」描く人だと感じたこと、ネームは「ファン目線」で読んだことが語られる。コミカライズを全面的に信頼している様子が伝わってくる。
カバーをめくると、特別企画「もし女性キャラが全員女子高生だったら?」の4コマと、タイトル差し替え案「化粧をする。そして男子高校生を拾う。」の試作カットが出てくる。巻を買った人だけが読める、得な部分だ。
ひげひろ1巻を考察|運命は気づいたときには足元にある

「運命は後からわかる」が1巻の骨組みだ
1巻を読み終えて、俺がいちばん強く感じたのは、この巻が恋愛の話というより「出会いの重さは、あとから効いてくる」という話だということだ。結論から書く。吉田は沙優を拾った側ではなく、沙優の運命になった側だった。それに本人が気づく瞬間までが、1巻の一本道になっている。
根拠の1つめは、第6話の映画の場面にある。劇中のカフェマスターが「運命の出会いは後になってわかる」と語ると、吉田は妙にしっくりくる。吉田が自分の運命として思い浮かべるのは、就職説明会で声をかけてくれた後藤だ。理屈としては、これは正しい。
ところが作者は、その直後に三島の回想を差し込む。「ただ転んだ私に手を差し伸べただけかもしれない、それでも私は救われた」。
続けて、沙優の「私は…嬉しかった」が来る。吉田にとっては、ささいな行動だった。相手にとっては、人生が動いた瞬間だった。この2つが並んだ時点で、吉田は運命を受け取る側から、与える側へ位置が入れ替わる。
雪かきを思い出してほしい。降った朝は、ただの重労働だ。春になって道が乾き、あの道を救急車が通れたと聞いて、やっと意味がわかる。運命の出会いも同じで、そのときは成り行きに見える。吉田が沙優を拾った夜も、酔っ払いの成り行きだった。
根拠の2つめは、三島と沙優の対比だ。三島は「物語なら泣けますけど私は御免です、今以外に私は生きてない」と言い、気づくのを待たずに吉田へ抱きつく。
運命に今すぐ気づこうとする人だ。一方の沙優は、何も言わずに待つ。吉田が帰る時間もわからないまま、風呂を沸かし、布団を敷き、柚の香りまで用意して。
だから第6話の最後で、鍵のかかっていない玄関が効く。吉田の頭の中を、沙優の「今まで要求もしない人はいなかった」という言葉と、三島の「気づいたときには手の届かないところに」が同時にかけめぐる。
「ずっといるとは限らないだろ」。この一言で、吉田は出会いの重さを、沙優を失う恐怖と一緒に初めて受け取る。「沙優…!!」の叫びは、保護者の焦りだけではない、と俺は読む。
もう1つ、構造の話を足しておく。後藤と三島は、恋愛の軸にいる。沙優は、第4話の「妻がいるのに他の女と遊んできた男の気分」というモノローグが示すとおり、家族の軸にいる。
吉田はその交点に立っている。1巻の吉田はまだどちらも選んでいない。選ばないまま、いちばん失いたくない相手だけが先にはっきりした。そこが、この巻の見事な終わり方だ。
後藤の「恋人がいる」発言は宙に浮いたままだ
1巻で答えが出ない点が、1つある。後藤は第1話で「恋人がいるの」と断った。ところが第3話の最後には「私のこと好きって言ったくせに」と心の中でむくれ、第4話の焼肉では吉田の心変わりを明らかに気にしている。振った側が、振られた側の目移りを恐れているわけだ。
本当に恋人がいるのか、断る口実だったのか、吉田を試したのか。1巻の範囲では、どれとも決められない。決められない点は、決められないと書いておく。2巻以降で後藤の内側がどこまで描かれるのか、続きで確かめたい。
ひげひろ1巻でよくある疑問に答える
1巻には何話入っていて、何ページあるのか
全6話で、196ページだ。第1話から第6話まで、目次では001ページ、043ページ、075ページ、107ページ、135ページ、159ページが開始位置になっている。
巻末にあとがきやおまけは付いているか
付いている。足立いまるさんと原作のしめさばさんの、2本のあとがきがある。ほかに、制作工程の解説、アシスタントの祝辞、カバー裏の特別企画も収録されている。書きおろし短編は無い。
原作小説とコミックで読み味は違うのか
違う。しめさばさん自身があとがきで、コミカライズは心の中の描写や状況の描写が減りやすいと書き、足立さんは話の流れを漫画として読みやすく組み直したと評価している。原作は角川スニーカー文庫で、コミックは月刊少年エースの連載だ。
全何巻で、アニメ化はされているのか
コミックスは全13巻で完結している。TVアニメは2021年4月から全13話が放送された。1巻のどこまでが何話に当たるかは、この記事では確かめていない。
吉田が警察に連れて行かないのは、問題ではないのか
作中でも、吉田は自覚している。第2話のベランダで「俺も逃げ場を作ってやってる、クソったれだ」と自分を責める。マンガの中の話として読むのが前提で、現実の家出少女に同じことをするのは勧められない。困っている子がいたら、警察や公的な相談窓口が先だ。
2回目に読むなら注目したい3場面
1巻は、2回読むと伏線の顔つきが変わる。再読するなら、次の3か所を見てほしい。
- 第2話の灰皿の場面:沙優が「ここで吸えばいいのに」と言い、吉田が「だってお前がいるだろ」と返す。遠慮の裏が気づかいだったと、あとでわかる。
- 第5話のみかんの化粧水:吉田がこぼした好みを、沙優は聞き逃さない。「吉田さんの家で使うんだから」と選ぶ理由まで、そっと見せている。
- 第6話の映画館の場面:吉田のモノローグ、三島の回想、沙優の一言が、3コマ続けて並ぶ。ここだけ読み返すと、最後の叫びの意味が変わる。
読んだ感想|連絡先がひとつだけの携帯が重かった
還暦の俺が、いちばん胸にきたのは第5話だ。沙優が、連絡先にたった1人しか入っていない携帯を見せて、「吉田さん専用だね」と笑う場面。
北海道を出て半年、見ず知らずの男の家を転々とし、電話をかける相手も、かけてくる相手も、全部切ってきた子だ。その子の携帯に入った、たった1人の名前。札幌の自分の机で、このコマを見て目が熱くなった。足立いまるさんの絵は、その重さを表情だけで描ききっている。
沙優の出身地が旭川だと知ったとき、同じ北海道の人間として一度、ページをめくる手が止まった。冬の始発待ちのバスターミナルや、深夜の駐車場に立つ制服姿の子を、この物語は他人事にさせない。
吉田のやったことを「正しい」と断じるつもりは、俺にはない。それでも、沙優に手を出さず、味噌汁だけを頼んだ一点は、この作品の品質を保証している。
橋本の「フラれてからが本番」にも、思わずうなった。妻を見送った俺は、あのとき押していたら、と考えることがたまにある。仮定の話に意味は無いが、5年の想いをもう一度ぶつける吉田を見て、胸がすいた。振られても諦めない道がある、と若い読者にそっと示している。
三島には、複雑な気持ちが残る。「スタンバイしている人が必要」という言い分は、仕事の論理としては筋が通る。ただ、恋の場面で言えば「後藤を諦めたら私の番」という宣言だ。順番を待つ側の、生々しい心理だと感じた。そこに流されず、困りながらも受け止める吉田を、俺はこの巻で好きになった。
冬のこたつにみかん、という景色は、北海道の家ならだれでも思い浮かぶ。吉田が昔みかんが好きだったとこぼし、沙優がオレンジの香りを選んだ場面は、そのこたつの暖かさに近かった。生活のなかで、人はこうして少しずつ家族になる。
巻末の、作り手たちの言葉を読んで、この作品は作る側に愛されていると確信した。マンガは1人では作れない。関わった全員が、沙優と吉田を幸せにしたがっている。その熱が、1巻全体の優しさの原料になっている。
最後に、第2話の台詞をもう一度だけ引く。「基準を低く持つな、正しい尺度で物を見ろ」。沙優に向けた言葉であり、昭和育ちの俺たちが令和の子どもたちに手渡すべき言葉でもある。1巻を読み終えて、俺はこの続きを追いかけると腹をくくった。
この1巻を読み終えたら、手元に置いて、気になった台詞を何度でも読み返してほしい。最後にもう一度、購入先を置いておく。
この記事の書き方と裏取りについて
この記事は、櫻田泰憲が1巻を読んで書き留めた感想と体験をもとに、AIアシスタントの支援で文章化し、本人が内容を確認・加筆して公開している。作品情報はKADOKAWAの公式ページと、巻末の奥付で裏取りした。


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